短編 Sparks はテレンス・T・ダービーという男が嫌いだった。 物腰柔らかな雰囲気で誰の気も荒げることない口調。少し冷たささえ感じさせる礼儀正しい態度。ディオに気に入られ、館を任されている執事。仕事っぷりも有能なようだし、ディオの側 …
短編 ギムレットには早すぎる1 滝川さんから電話がかかってきたのは、9月の終わりの土曜日の午前中だった。 前日、締め切り上がりの担当の作家さんと打ち上げと称した飲み会を夜遅くまでしていたため、まだ体のなかにはアルコールが充満しているのを感じながら体を起 …
短編 ジプシー・キャラバン 頬を切る風が鈍い金属みたいに冷たかった。ドルルルル、という野太いエンジン音と共にイエローオーカーの風景が過ぎ去っていって、目が乾いて涙が出てくる。ずっと鼻にまとわりついているのは甘いモスクの香水だ。嘘みたいに甘ったるい …
短編 She is a babe 目を覚ますと、カーテンの隙間から光が差していた。朝だった。 まだ意識は完全にこちらの世界には戻ってきていないものの、腰回りに少しの重みと、背後に何か温かい気配を感じる。 それに導かれるように、温かい気配があるほうへ …