短編 Golden Slumbers ビートルズは元々好きだったが、ここしばらく、サバイバーで流れるビートルズが一番のお気に入りになった。 初めてサバイバーに足を踏み入れた時も『ゴールデンスランバー』が流れていて、暖かみのある電球色に照らされた店内に佇む …
短編 ルミナスブルー 躑躅森盧笙は長年の友だちである。 長年といっても出会ったのは大学時代のことなので、付き合い自体がとりたてて長いというわけではない。しかし、教員免許を取得し大学を卒業してからまさかの芸人を目指すという方向転換、するする …
短編 Summer touches you ※0の少し前、桐生と錦が組に入ってしばらくした頃のお話です。 一仕事終えた後の一服を体が欲していた。煙草はたしかジャケットの内ポケットに入れていたはずで、ジャケットはどこに置いたのだったかと思い返し、しばらくして一階に …
短編 Just another day 少し前、ハンジュンギがキムチを寄越した。 訳を問えば、数日前にコミジュルの一員が起こしかけたトラブルを、そこに通りかかった俺がうまく場をまとめて事なきを得るに至ったから、とのことで、なんともいじらしいほどに真面目な男 …
短編 because ※「日.本.で.一.番.悪.い.奴.ら」という映画の一場面のパロディです。 高齢者が薬物を使用している場面があります。人道的に良くない作品です。ヒロインも少ししか登場しません。 それでも問題ないという方のみ、自己責任でお …
短編 愛するには短すぎる 窓を開けると、少し埃っぽいざらざらした空気が頬に触れた。騒がしく猥雑な街は、日が傾き始めると途端に本領を発揮する。朝吸った空気よりも、濃密に人の気配を感じた。 「なんだか、蒸すわね」 そう言いながら下着姿にガウンを羽 …
短編 メメント フロントガラスに細かいシャワーのような小雨が打ち始めた。一番ゆるやかなスピードでワイパーを動かし、しずかに信号が変わるのを待つ。雨粒越しの夜景の光を、桐生は好きだった。嫌いなものや避けたいものは山ほどあったが、好きと言 …
短編 アイボリー ねぇ、足立さんの話聞いた?と同僚が嬉々と話しかけて来た時には、噂は既に耳に届いていた。どうしてそんなに嬉しそうな顔で人の不幸な話を触れ回れるのか、わたしには同僚の考えていることがさっぱりとわからなかった。曖昧に返事をし …
短編 セシルの週末 その少し奇妙とも言える客が訪れたのは、風が強くぐっと冷え込んだ寒い日だった。彼女は鼻の頭を少し赤くして、コートの襟を立てていた。開店してまだ早い時間にやって来たので客はゼロ、スタッフのいろはもまだ出勤しておらず、がらん …
短編 百鬼夜行 ※刺青を入れる描写があります。不快に感じる方はブラウザバックでお戻りください。 邪魔すんぜ、という声とともに、扉は男によって乱暴に開かれた。その声でだいたい来訪者の検討はついたが、画集を手にしていたが顔を上げると、予想 …